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名古屋地方裁判所 昭和63年(わ)330号 判決 1988年6月27日

本籍

名古屋市中村区名駅南三丁目四〇一番地

住居

同市中村区若宮町三丁目五三番地

古物商

久野英二

昭和一六年四月一六日生

右の者に対する所得税法違反被告事件につき、当裁判所は、検察官北島孝久出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役六月及び罰金五〇〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは、金二万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

この裁判が確定した日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。

訴訟費用は被告人の負担とする。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、名古屋市中村区名駅南三丁目四番一三号において「久野商店」の名称で古物商を営むものであるが、自己の所得税を免れようと企て、所得税の確定申告に際しては、所得金額に関する収支計算をせず、適宜の過少な所得金額を計上するところのいわゆる「つまみ申告」を行う方法により、所得の一部を秘匿した上

第一  昭和五七年分の実際の所得金額が一七九七万九三七九円で、これに対する所得税額が五四〇万円であるのに、昭和五八年三月一四日、同区太閣三丁目四番一号所在の名古屋中村税務署において、同税務署長に対し、所得金額が三一〇万円であり、これに対する所得税額が一六万七〇〇〇円である旨の虚偽過少の所得税確定申告書を提出し、正規の所得税額との差額五二三万三〇〇〇円を免れ

第二  昭和五八年分の実際の所得金額が二八九一万〇八七一円で、これに対する所得税額が一一一九万四七〇〇円であるのに、昭和五九年三月二日、前記名古屋中村税務署において、同税務署長に対し、所得金額が三五〇万円であり、これに対する所得税額が二二万二四〇〇円である旨の虚偽過少の所得税確定申告書を提出し、正規の所得税額との差額一〇九七万二三〇〇円を免れ

第三  昭和五九年分の実際の所得金額が二〇〇二万四八九七円で、これに対する所得税額が六一三万円であるのに、昭和六〇年三月九日、前記名古屋中村税務署において、同税務署長に対し、所得金額が四五五万円であり、これに対する所得金額が三六万四一〇〇円である旨の虚偽過少の所得税確定申告書を提出し、正規の所得税額との差額五七六万五九〇〇円を免れ

もって、いずれも不正の行為により所得税を免れたものである。

(証拠の標目)

判示事実全部につき

一  被告人の当公判廷における供述

一  被告人の検察官及び大蔵事務官に対する各供述調書

一  久野弘子の大蔵事務官に対する各供述調書

一  大蔵事務官作成の各査察官調査書

判示第一の事実につき

一  大蔵事務官作成の

1  昭和六〇年五月三〇日付証明書(「記録証第一二七号」とあるもの)

2  昭和六〇年一一月一二日脱税額計算書(「記録証第三二一号」とあるもの)

3  昭和六〇年一一月一三日付証明書(「記録証第一三七号」とあるもの)

判示第二の事実につき

一  大蔵事務官作成の

1  昭和六〇年五月三〇日付証明書(「記録証第一二八号」とあるもの)

2  昭和六〇年一一月一二日付脱税額計算書(「記録証第三二二号」とあるもの)

3  昭和六〇年一一月一三日付証明書(「記録証第一三八号」とあるもの)

判示第三の事実につき

一  大蔵事務官作成の

1  昭和六〇年五月三〇日付証明書(「記録証第一二九号」とあるもの)

2  昭和六〇年一一月一二日付脱税額計算書(「記録証第三二三号」とあるもの)

3  昭和六〇年一一月一三日付証明書(「記録証第一三九号」とあるもの)

(法令の適用)

被告人の判示各所為はいずれも所得税法二三八条に該当するところ、所定刑中いずれも懲役刑及び罰金刑を選択し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、懲役刑については同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第二の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で、罰金刑については同法四八条二項により各罪所定の罰金額を合算した金額の範囲内で、被告人を懲役六月及び罰金五〇〇万円に処し、右罰金を完納することができないときは、同法一八条により金二万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置し、情状により同法二五条一項を適用して、この裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予し、訴訟費用については、刑事訴訟法一八一条一項本文により全部これを被告人に負担させることとする。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 遠山和光)

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